一般的には「収納が多い」のは、家に対しての誉め言葉として使われるが、必ずしもそうとは限らない。
というのも、本当に余裕のある広い家なら問題は無いが実際には限られた予算の中で限られた面積で、多くの家づくりは行なわれている。 そんななかでリビングや水廻り、それから個々の居室が圧迫されるほどの収納を計画しても、決して快適な家とは言えない。
「物を収納する」ために家を建てるわけではなく、「快適に住まう」ために家を建てるはずであり、収納も全体のバランスの中で計画されるべきである。
そして全体量の「多い」「少ない」だけでなく収納は「どこにあるか?」がとても重要になる。
例えば1軒の家に6畳分の収納があるとする。「3畳の納戸が1階と2階に1つずつある間取り」と「1畳の収納が6箇所に家中に分散している間取り」とでは、収納の全体量こそ一緒だが、使い勝手の良し悪しに大きな違いが生まれるのは火を見るよりも明らかだ。
そういった行為を行なう場所の近くに収納が用意されていないとやはり片づかない。
「適材適所」の収納が大切だと言える。
収納は「見せる収納」と「隠す収納」の2つに大きく分けることができる。
「見せる収納」とはキッチン用品、本、衣類・・・をお店のようにディスプレイする方法だ。しかし、それぞれのもののサイズや、色、形などがバラバラゆえ、それを検討しながら美しく「見せる」のはかなりの技術がいる
基本的には「隠す収納」が誰にでも使いやすい。そのため多くの収納には扉がついている。扉には引き戸、開き戸、折れ戸などがあるがそれぞれの特徴がある。引き戸はよくある押入れが代表的だ。扉が動くスペースは必要としないので廊下や狭い空間でも使い勝手は悪くないが半分は常に閉じていて、中を見ることが出来ない。
開き戸は扉が開いた時に内部全体を見渡すことが出来るが、扉が開くスペースをかなり必要とするので、狭い空間に設置するのは難しい場合もある。
折れ戸は引き戸と開き戸の両方の利点を兼ね備えているので最も採用されている。
一般的な「押入れ」は奥行きが約90センチある。もともとは布団を入れるための収納であるからそのサイズになっているが、逆に布団以外の物を入れるには奥行きが深すぎて使いづらい。奥に入れたものは出し入れが出来ないために、そのまま放置される。
このように実際の面積とか容量の割に、収納できるものが少なかったり、収納できても出し入れがしづらいという収納には、その他に「階段下収納」や「天井裏収納」があげられる。
間取りを作る際に、収納の絶対面積ばかりに気を取られるのではなく、実際に「何」を「どんなふうに」入れるのか?そして実際に物を出したり、入れたり、整理しているところをイメージして、本当に使いやいか?検証してみることが大切だ。